第8章 男どうしの対立の論理
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男性は、女性よりもずっと頻繁に危険で競争的な相互交渉に巻き込まれる
実質的に一夫多妻であるような他の哺乳類と共有している性差であり、そうであることに不思議ではない 個体の適応度の分散が大きくなり、勝者と敗者にとっての結末がより真剣なものになるほど、危険な競争戦術を取ろうとする誘惑も大きくなる
シミュレーションモデル p.266
淘汰上有利であるような競争的戦略は、競争的勝利と、それがもたらす適応度との正確な関係によって決まるという原理を示す
とくに、適応度の差異が大きくなればなるほど、対戦者にとっても自分にとっても、より危険な行為が淘汰上有利になっていくだろう
人類の歴史を通じて、勝者は女性を獲得してきたし、最強の勝者はもっとも多数の女性を獲得してきた
しかし、危険を顧みない心理について考察するときには、大きな勝利のチャンスを掴むことができるかどうかよりも、全てを失う可能性がどれほど高いかの方が、おそらくもっと重要だろう
繁殖に完全に失敗するとわかっているような道を歩んでいる生き物は何でも、どうにかして、しばしば死の危険を犯してでも、現在の生活状況を改善しようとするはず
ウィルソンとヘルシュタイン(1985)は、他人に襲いかかるような暴力や、その他の犯罪行為に走るような男性は、法律を守っている男性とは異なる「時間の地平」に住んでおり、長い目で見た先の将来よりも、近い将来に相対的に重きを置いているのだろうと示唆している これを支持するいくつかの証拠がある
個人の時間の地平をそのように調整することは、おそらく、自分の寿命と最終的な成功を予測する情報に対する、適応的な反応
自然淘汰によれば、危険がない状況下で、自分自身の予測される生活状況が非常に貧しく、適応度上失うものがなにもないような状況では、危険を顧みない戦略が特に有利となるに違いない
この一般的な叙述の特定の例として、繁殖上の失敗の可能性が高いと考えられる人口グループでは、危険な競争的戦術がとくに広く採択されるだろうということになる
殺人の人口学
カナダにおいて、被害者/加害者として殺人に巻き込まれる危険率を、性と年齢の関数で表す
殺すことは若い男性に集中しているようであり、それほどではないにせよ、殺されることにおいても同様
男性は思春期後期から成人期初期にかけて、もっとも対立的になるようだが、それは、地位や資源の獲得に非常に競争的になる生活史の段階であり、結婚できるかどうかは、過去の社会においても、現在の社会においても、本質的に重要なこと
暴力に訴えることも辞さない傾向は、歴史的に性淘汰が最も強く働いてきたような性・年齢クラスにおいて、最も強く選ばれるように淘汰が働いてきたと考えてよいだろう
しかしながら、それとは対照的に、2人の男性がともに、同様に不利な立場にいると認識しているときには、若い方ではなくて年上の方が失うものが少ないので、銀行強盗や殺人的対立などの危険な戦術を取りたがるはずだと論じることもできる
これら二つの進化モデルのどちらかが取られるかを経験的に知ることは、始めに思うほど容易ではない
年上の男性よりも若い男性のほうが、より暴力的であることは明らかであり、この違いは、性向と態度における成熟の過程を反映しているのだと、多くの著者は示唆している
しかし、人生の道筋とともに、当然ながら状況も変化する
例えば、セックスの相手がいないことと子どものいないことが、危険をどれほど顧みないかに影響する状況因子であるならば、危険を顧みない男性の割合は年齢とともに減少することになる
年齢に関連した状況変数の影響を超えて、暴力に訴える傾向や危険を顧みない傾向に対して、年齢による有意な影響があるかどうかは、まだまったくわかっていないし。将来の研究で追求してみる価値が大いにあるだろう
男性が父親になると、危険を顧みない度合いがどれほど減少するかは、非常に興味深い
残念ながら、資料は存在しない
しかしながら、現在の適応度または適応度の期待値に関連していると思われる人口学的変数、つまり、就業状態や婚姻状態に関する変数は、評価することができる
1972年のデトロイトの殺人に関する私たちの研究
注意点
分布の形はカナダのそれとほぼ同じであるが、率はずっと高いことに注意
デトロイトの男性の被害者率は、カナダの男性の被害者率よりもずっと年齢による差が大きいことにも注意
デトロイトにおける被害者と加害者の分布が非常によく似ているのは、サンプルにおいて「ささいな口論」による殺人が非常に多くを占めていることを反映している
同じ性・年齢集団をとってさえ、殺人に巻き込まれる確率は状況変数に依存している
成人男性殺人被害者の43%、成人男性殺人加害者の41%が失業中であったが、この市の成人男性全体の失業率は11.2%であった
成人男性被害者の69%と、成人男性加害者の73%が結婚していなかったが、市民男性全体では、その数字は43%だった
被害者集団と加害者集団とは驚くほど類似しているが、この類似性は、他の変数にも当てはまっている
男性被害者と男性加害者の双方が、36%が過去に犯罪記録を持っている(交通違反、酒乱、薬物使用を除く)
この集団においてささいな口論の割合が高いことは、もっぱら、加害者と被害とが似通っていることに起因している
「動機」の問題
「口論」といいうカテゴリーの本質は、議論が突発的に起こったものであること、それが面と向かっての対決であること、終幕を迎えるまで止まらずに発展していくこと
「口論」というカテゴリーはもっと実質的な問題と交錯している
まったく同じ侮辱の言葉であっても、相手がそれを一週間も恨みに思い、待ち伏せたとしたら、それは殺人で起訴することができ、動機も「復讐」などの別のカテゴリーとなるだろう
ウォルフガングの動機の一覧表
表面的には適切だが、概念的にはごたまぜ
以後の殺人研究者の大半はこのカテゴリーを踏襲している
こんな不満足な状態にとどまっている理由の一つは、動機という言葉は、通常、計画的な殺人に当てはまる概念
侮辱とその是正
被害者が殺されるにあたって、個人間の相互関係としてはなにも役割を果たしていない事件は別に扱うべきだ
強盗殺人など
実際にそうすることは困難ではあるが、殺人事件を「社会的対立」の事件と、他の犯罪(たいていは強盗)をなすことにともなって生じた偶発的な事件との二つに分類すると、大まかに目的を達成することができる
社会学者のマリー・ウィルト(1974)が、1972年にデトロイトで起こった690例の殺人を対象にして行った研究では、まさに「社会的対立」の殺人と「犯罪指向的」殺人で、およそ3分の2が「社会的対立」の殺人であると認められた ウィルトのカテゴリーも、一部は対立の内容で分け、一部は両者の関係で分けているようなぎこちない混合
私たちは、「嫉妬」と「仕事」というカテゴリーは温存したが、残りの事件についても、できるだけ同じような実質的内容で分類した
事件の半分以上(212例中124例)は、最初の二つのカテゴリーに分類される
二つとも、地位をめぐる競争と「顔」を維持することに関わっているといえるだろう
「行き過ぎたひけらかし競争」
2人またはそれ以上の人間が、互いの知人の前で誰が一番優れているかを競おうとするもの
競争者同士が近縁である例はひとつもない
同性内競争の強度の性差から予測されるように、そのほとんどが男性が引き起こすもの
女性が男性を殺した2例の両方ともが、女性が止めようとして男性を殺したケース
女性間のそのような事件はたった一例であり、異性同士の間でひけらかしの競争を含む事件は一つも起こっていない
「先行する口頭でのまたは肉体的な虐待に対する報復」
これらの事例を統合する性質は、「顔」をつぶされないようにするには、その是正を要求せねばならないと思われるような、人前での侮辱があったということ
強盗殺人
強盗殺人は、合理的に考える人間にとって大きな誘惑であるためそれを阻止するためには特別に厳しい処罰が必要だと広く考えられている
しかしながら、進化的枠組みで考えれば、強盗殺人に関する事実も、「ささいな口論」にかかわる事実も、ともによく理解できる
強盗殺人においても、さらに強盗一般においても、非常に大きな性差が存在する
もしも盗むことが単純に貧困と関係しているのならば、盗むのは圧倒的に女性であるはずだ
最近のFBIの統一犯罪報告によれば、1985年の合衆国で起こった強盗の92.3%が男性によるものであり、住居侵入も92.3%が男性(合衆国法務省, 1986) アメリカの男性がアメリカの女性よりも貧困であるはずはないのだが、男性は女性よりもしばしば、他人の財産を自分のものにしようとする
私たちのデトロイトのサンプルでは、「犯罪指向的」殺人では(134例の95%)、「社会的対立」の殺人よりも(337例の75%)、もっと男性の割合が高かった
さらに、女性が引き起こした7例の犯罪指向的殺人のうち4例は、男性の住居侵入盗や強姦者に対する自己防衛であり、女性自身がその犯罪を犯そうと思っていた事件はわずかに3例のみ
10年間のカナダのサンプルでも、「強盗、窃盗」が動機である殺人454件の96%が男性によるもの
デトロイトにおける犯罪指向的殺人の加害者の方が、社会的対立による殺人の加害者よりも多く男性を含んでいるばかりでなく、彼らのほうが、危険を顧みないタイプの人口学的プロフィールによく合致している
犯罪指向的殺人男性(平均27.8歳)の方が、社会的対立による殺人男性(平均34.2歳)よりも年齢が若く、彼らの方が失業率が高く(43.6% vs. 38.9%)、彼らのほうが結婚している割合が低い(73.8% vs. 57.8%)
殺人一般よりも強盗殺人の方が男性優位であるということをどう考えたらよいか
私たち人間のように、父親からの投資があるような種では、男性は、自分自身が食べていくのに必要なもの以上の資源を手に入れ、それを誇示すれば、繁殖成功度につながる 私たちは、男性間に常に存在する競争的状況のためライバルを追い越し、配偶相手を引きつけるための余剰資源が必要だと、常に男性が感じていることが、究極の原因だと考えている
強盗殺人の被害者にいかに女性が少ないかということも、注目に値する
カナダでは1974年から1983年までの626件の強盗殺人被害者のうち、女性は20.3%
これらの事件が単に他人の金を不当に自分のものとすることと理解するべきものであるならば、男性加害者は頻繁に女性を被害者として選ぶはずだと予測される
実際、女性はしばしば強盗の被害者である
男性がより多く殺されるのは、男性の方が女性よりも強く強盗に抵抗するからで、それは、被害者の男性も加害者と同様に「金の必要性」を強く感じているからかもしれないし、普通は、男性の方が多額の金を持ち歩いているからなのかもしれない
しかし、男性被害者の数がずっと多い理由の、少なくとも一つは、強盗殺人が「ささいな口論」と同様、「顔」をつぶされたくないという対立的要素と男性同士のライバル感情を、いくらかでも含んでいることだろう
強盗殺人の被害者の男性は、無謀な抵抗を試みることがあるが、それは、他の男性よりも劣位になり侮辱を受けることが我慢ならないからなのだろう(たとえばToch, 1969) 性的ライバル意識
雌が子供に大量の投資をするような有性生殖生物であれば、雌の努力から(適応度上の)利益を得る機会をめぐって、必ずや雄間に競争が生じる
体内受精、妊娠、授乳という現象があるため、人間を含め4000種以上に上る哺乳類には、雄間の性的競争が必ず見られる ほとんどの哺乳類では、卵子に受精したあとでは、雄は、子供の成長にも生存にもほとんど何の貢献もしない
雌の繁殖努力の大部分が子育てに集中しているのに対し、雄は繁殖努力の大部分を、配偶の機会をめぐる競争や地位をめぐる競争やと、雌に対する求愛に費やす
しかしながら、齧歯類から霊長類までのいくつかにわたるごく少数の哺乳類では、雄と雌とが共同して保育にあたる、ホモ・サピエンスはそのような種の一つ 哺乳類の父親が直面する非常に深刻な問題で、ほとんどの哺乳類の父親が親の投資を完全にやめてしまっているのは、そのせいだとも考えられるほど 第3章 嬰児殺しでみたように、夫自身の子ではないことがはっきりしていたり、疑われたりする場合、多くの社会では、子殺しの理由になると考えられている 第4章 親による現代の子殺しでみたように、私たちの社会では、本当の父親ではない男性と一緒に暮らしている子供は、虐待されたり死んだりする危険性が非常に高くなる 父親が投資を行うという事実は、男性の性的ライバル意識に複雑な影響を与えている
強い一夫多妻傾向の配偶システムが存在しなければ、雄の適応度の分散は大きくはなく雌とほぼ同じになるので、面と向かって配偶のチャンスをめぐって争うことは少なくなるだろう
その結果生じることの一つは、これら一夫一妻で雄の世話のある動物では、雄の形態が闘争のために特殊化しておらず、雌の体形と基本的に区別がつかないということだ
父親による投資があると、雄の繁殖努力を配偶競争から再配分することになるので、地位が高いことに伴う適応度上の有利さも、繁殖に完全に失敗する危険性も、ともに減少することになる
そこで、両性による子どもの世話があると、男性間の対立が弱まり、より危険性の少ない競争戦略が採択されることになる
父親による投資があると、だまされることは、単に一つの受精の機会を競争相手の雄に取られるだけのときよりも、ずっと大きな損失をもたらすことになる
父親による投資のない乱婚の社会では、雄は、受精へと導かれる可能性の高い配偶の数を最大にしようと努力し、また、自分のライバルの行動に直接的に干渉しようとするかもしれない その雌が持つ特定の子供が確実に自分の子であることを完璧に保証するために、受精可能な全期間にわたって雌を防衛することには、それほどの価値はない
少なくとも、そのような配偶者防衛をするには、他の潜在的に需要可能な雌を無視せねばならないのであれば、それにはそれほどの価値はない また、そのような配偶システムにいる雄は、いま他の雄と配偶したばかりで、もうすでに受胎しているかもしれない雌を無視することもないだろう
求愛や交尾につぎ込んだ努力の見返りが大きいと期待される、未配偶の雌の方をより好むことはあるかもしれないが、ある雌を他の雌から区別することによって得られる淘汰上の有利性はさほど大きくはない
実際、ある雌が他の雄と交尾したところを見ると、雄は余計に興奮するかもしれない。なぜなら、そのように興奮する雄の方が、先に交尾した雄よりも精子間競争で有利になる可能性があるから(Smith, 1984) しかし、後に雄が父親として振る舞い、最終的にはその子を受精するために費やしたよりもずっと多くの’時間とエネルギーを、自分の子と見られる子の世話に費やすようになることになる種では、この数を最大化することはもはや唯一の目標ではない
その後の父親としての努力を自分に有利なように展開するためには、どの子が自分の子なのかを正確に見極めなければならない
その結果、父親の投資があると、雄の性的嫉妬、つまり、自分の配偶相手は、必ず自分とだけしか性的アクセスを持たないようにしようとする心配は淘汰上有利になる
投資する父親は、だまされて自分の親としての投資が他の子に向けられることがないようにするために、様々な行動的傾向を発達させている
このことに関する研究は、哺乳類よりも、両親そろっての世話がずっと一般的に見られる鳥類で行われてきた
もっと一般的には、雌が受精可能な全期間にわたって、雄は密接に雌を防衛する
ムクドリの雄は、交尾が受胎に結びつく可能性の高い時期である数日間は、自分の雌をほんの少しでも視界の外に出さないように注意している たとえ、雌を防衛することによって排卵時期が遅くなったり、巣を空ける結果、種内托卵の危険が増すことになっても、雄は雌を防衛する
ホモ・サピエンスは、同様な目的の達成に有利と思われる、すなわち、男性の子とされている子が本当に彼の子である確率を高めるようにさせる、様々な複雑な心理的傾向を示している 男性が女性の行動をコントロールしようとする執拗な傾向や、女性に対する性的アクセスや女性の繁殖能力は有用品であって、男性がそれを「所有」したり、交換したりすることができると男性が考える傾向などに、明確に現れている
さらに、性的な占有権とコントロールを獲得し、それを維持するために脅しや暴力を使うことと密接に結びついている
性的嫉妬は特定文化の産物であり、少なくともいくつかの文化には存在しないと主張する人もあるが、民族誌の記録を見ると、そうではないことがわかる
上記の複合体は通文化的に見られる
「だれかに取って代われられるのではないかと恐れ、油断なくしていること、地位や愛情が失われるのではないかという心配」が辞書による嫉妬の定義(Morris, 1969) 嫉妬とは特定の感情でも特定の行動でも定義することはできない
自分が価値を置いている関係に対する驚異を感じた時に引き起こされ、そのような脅威に対抗するための行動を動機づける内的状態を指している
価値を置いている関係が「性的」関係であるときに、嫉妬は性的嫉妬となる
性的嫉妬に関する進化的視点からは、両親が子の世話をする哺乳類においては、騙されることの危険性が対称ではないから、性的嫉妬には性差があるだろうという仮説が導かれる たとえば、女性は自分の配偶相手の注意や資源の分配に関して嫉妬を強く感じると予測されるが、特別に忠実かどうかについては、男性と同じ考えは持たないかもしれない
嫉妬には、理論から予測されるような性差が存在するか
嫉妬が暴力的に表現されるかどうかには、非常に大きな性差が見られる
実際、世界中どこでも、男性の性的嫉妬は女性のそれよりもずっと多い殺人動機であり、夫婦間の殺人の主要な動機である
しかし、もちろん、男性は女性よりもつねに暴力的なので、この面でも男性の方が暴力的であることは、必ずしも嫉妬における性差を示しているわけではない
男性の女性の嫉妬の質をみきわめようとした研究の方が、ずっと役に立つ
アメリカの男性と女性は、嫉妬を認めることにおいては性差はないらしい
たとえば、ブライソン(1976)が行った、66人の男子学生と102人の女子学生とを対象にした研究では、これまでに嫉妬を感じたことがないと答えたのは、1人の女性だけだった しかし両性ともに嫉妬は経験するものの、どのように経験するかは明らかに異なっている
ブライソン(1976, 1977)は、嫉妬にともなう感情をどのように表現するかについていくつかの性差を見出した 男性は女性よりも、自分が怒ったり、酒を飲んだり、脅しをかけたり、性的に興奮したりするだろうと答え、他人とよく外出するようになるだろうと答えた。
一方、女性は、泣いたり、無関心を装ったり、自分自身の魅力を高めようとするだろうと答えた。
アメリカ人の嫉妬に関するこれらの社会心理学的研究の中で、嫉妬の進化的分析としてもっとも興味深いのは、コネチカット大学の博士論文として提出された、マーク・ティーズマン(1975)の研究 結婚してはいないが付き合いを続けている若いアメリカ人のカップルを対象に、嫉妬を誘発させる仮想状況において、「役割」を演じさせた
その状況は、カップルのどちらかが忠実でないと疑わせるもので、それはどちらの性の場合もある
もっとも驚くべき結果の一つは、嫉妬の経験の内容に関する大きな性差
男性は、自分のパートナーがライバルの男性と性的接触を持っている夢想に悩まされたが、女性は、おもに、自分のボーイフレンドがライバルの女性に振り向けている時間や金銭や注意に心配が集中していた
このことは、もちろん、進化理論から予測されるものであるが、この結果が他の集団でも当てはまるかどうかが知りたいところである
性的競合による殺人
ウォルフガングのフィラデルフィアの殺人動機の中で、嫉妬は全体の三番目にあたる
口論と呼ばれているものの多くは、男性の性的競合によるものが含まれている可能性が高いが、「家庭内のいざこざ」とうものでも、その多くが、男性が女性の性的不実をなじったことに起因している可能性が極めて高い
残念なことに、ウォルフガング(1958)の「嫉妬」というカテゴリーにどんな事件が含まれているのかはさっぱり明らかではない
1972年のデトロイトのサンプルでは、ウィルトは、58例を性的嫉妬にもとづくものと分類している
さらに23件が夫婦間の事件であり、もう1件が義理関係
男性が加害者である例が40例
22例が男性被害者、18例が女性被害者
女性が加害者である例が18例
15例の男性被害者、3例の女性被害者
嫉妬して相手を避難したほうが最終的な被害者になることがあるので、この比較は正しくない
嫉妬が暴力に結びつくことにおける性差は、実はもっと大きい
1980年にマイアミで起こった全ての殺人については、ウィルバンクス(1984)の短い湯役からその内容を知ることができるが、ここから見て取れるのは、さらに大きな性差 被害者と加害者が同性であるような「三角関係」の事件だけを見ると、デトロイトのサンプルには、男性による17例と女性による3例が含まれているが、マイアミのサンプルでは、23件すべてが男性によるもの
殺人動機のすべての研究において、性的嫉妬と性的競合とは重要な要素をなしている
ウェスト(1968)のマンハッタンにおける殺人の研究でも、性的嫉妬は3番目の動機となっている Lobban, 1972は、スーダンの裁判所における殺人記録を読み、性的嫉妬は、男性が加害者である300件のうち74件(24.7%)を閉める、最多の動機であると報告している